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言語論

オリエンテーション

・ 文字は音よりも副次的ではあるが、文字のない世界では音や物やイメージによって意味を与えている

・ 言葉を使用する事によって意味伝達するのは勿論の事、ある言葉を共同体で使う事で他の共同体と差別化を図り仲間意識を高めようとしている。そのため各共同体で言語が非常に発達した。しかし、消滅する言語も出現するわけで、その中で我々が出来る事、それは記録に留めるという事である。

 

 

ことばについて

・ 近代言語学の祖であるFerdinand de Saussureは、言葉は記号の体系であると言った。シニフィエが意味するもの、シニフィアンが意味されるものを表している。例えば犬を例に挙げると、いぬが犬である理由というものはなく、いぬと名前を付けたに過ぎないし、各国で呼び方は異なる。言葉とそれが意味するものは1:1の関係ではなく、それは概念を指しており、またその概念も成長過程など時間の推移により区別され、記号に過ぎないため、言葉は恣意性(arbitrariness)を備えている。すなわち、話者のコミュニテイだとか暗黙の了解があり、社会が違えば言葉の意味も異なるのである。また、言葉は同時に同じ事を言う事は出来ず、順序立てをしなければならないという線条的という性質を備えている。絵を見た時そのまま見えるが、見る人によって状況説明の仕方が異なるのが例である。

・ 言語の要素については二種類あり、取り替える事のできる横の関係はシンタグム、縦の関係はパタダイムと言う。サピア・ウォーフの仮説である、言語相対説やチョムスキーによる言語生得説の説明も行われた。言語生得説とは1957年にチョムスキーが唱えた説で、人は誰でも言語を作り出す能力を備えて生まれてくるという。言語相対説については25日に詳しい説明があった。

 

方言について

・ まずは言語相対説についてであるが、個別の言語は思考を規定しているという。すなわち社会や言語と言葉が結びつき、社会の多くの思考様式が言葉に作用されるという。次いでに言語決定論とは個別の言語が話者の思考を規定している事を、色彩語とはどんな言語にも人間が知覚する不変色があるという事を意味している。

・ 言語とは実は同じ言語の方言である。それを言語は複数あると言っているだけなのである。そして言語を同じ言語と見なすには、話者同士が互いにコミュニケーションできるという条件が必要である。また言語は政治的な意図を持ち合わせている事も忘れてはならない。

 

国家と言語政策

・ 国の言語状況は国家の言語政策によって変化する。中国では多くの言語があり、そのまたグループ間での言語も異なっている。そして人間を支配する一番早い方法は言語支配である。多くの言語があると国家建設や統一にとって障害となってしまう。それから昔は一部族一言語であったが、国ができhegemony(派遣主義)が大きくなった。その国は二言語化されるか、標準語に統一してしまうかのどっちかである。そのうちに優性の力に支配され民族も滅んでしまう。そしてこのprestige化は言語にも起こっており、文化的優位だとか多くの人が使っているためprestige化するのである。また、言語の借用関係が平等であるかどうかや、どういうものは借用され、どういうものは借用されないかなどにもprestigeが重要となってきている。

 

リングア・フランカとクレオール言語

・ リングア・フランカとは異なった人種間で使われる共通語の事を意味する。ピジン語は英語を話さない人種のところへ西洋人が植民地支配のため侵入し、その間で生まれた語である。クレオール語は奴隷貿易に大きな役割を果たした言語である。そしてこれらピジン語とクレオール語の分布は、西洋人の植民地支配と一致している。そしてその後、奴隷同士の子供も生まれるなどし、クレオール化は進むが、脱クレオール化し消滅してきていると言える。

 

比較言語学

・ 言語を比較する際同じ系統のものを比較する事を比較言語学(comparative)という。系統樹とは、例えばA、B、Cの言語と祖語Xはどう関係しているかを考えるもので、一万年くらいまでならば遡って調べる事が可能である。それから日本語とターミナル語は農業関連の語において関連がある。しかしある分野の語だけを比較するのは危険であり、2つは系統が同じであると言えるのかどうかであるが、今回の場合、農業と言葉が一緒に伝わってきた可能性が高いという事がいえる。

 

系統樹モデル

・ 前回は言語系統について述べたが、今回はそれと関連する言語接触について述べる。言語接触には二種類あり、一系統のものと複数のものの二つに分かれる。実際言語圏では言語接触が多い事がいえるのも事実である。

 

系統樹モデル

・ 言語が同じルーツを持っていた場合、系統的言語と呼ばれるが、これらは同じ語族であるため、祖語を仮定し現在の言語(娘言語)が導き出された変化の道筋を辿る必要がある。語彙についてだが、語彙には基礎語彙と文化的語彙が存在する。基礎語彙はこれを比較する事によって言語の違いを調べる事が出来る。文化的語彙は文化的に有意な語からそうでない語へなど借用が起こりやすい。また語彙は昔入ってきた語と現在入ってくる語では語彙は異なったり、文法的な変化は借用されずに、内部変化が起こるだけなどの性質も備えている。そして文法的変化には主要部標示と従属部標示があり、日本語は従属部標示に属するのであるが、文中の格になるものが標示を受けているか否かでどちらの標示になるのか決まる。

・ 理想的な言語としての系統的言語モデルでインド・ヨーロッパ語族が挙げられる。理想というのは少数ずつに分かれていく事であるが、なかなかそういう事はありえないのが実際である。言語は分岐もするがくっつく事もあるし、祖語を仮定し辿った場合でも問題は多く存在する。

 

言語接触

・ 18世紀にウィリアム・ジョーンズがサンスクリット語に出会い、ラテン・ギリシャ語に似ている事に気付き、一つの言語(祖語)から発生したのであると考えた。すなわちインド・ヨーロッパ語族の発見である。また現在は消滅してしまった言語も第二言語のような形で使う場合もある。その例がアイルランドの英語とゲール語の例である。

 

言語類型

・ 借用語であっても、いつ借用されたかによって同じ語源でも違う発音になり得る。その音韻関係や系統関係を調べるには、借用リスクの低い基礎語彙を調べる事が良い。そしてその場合、祖先が同じであるから見かけが似ている、あるいは祖先は同じではないが、見かけが似ている(類型的類似)場合がある。類型語彙は普遍文法と関連しているため、多くの言語を比較し類似を探す事、つまり類型的に文法を見て、傾斜を調べる事が重要である。

 

他民族・多言語社会

・ 現在一般的に見て共通言語は英語である。次に広い地域で話される語、地域の共通語、狭い地域で話される語という順に言語は prestigeが異なっている。話者の地位によって言語の地位は決まり、言語の多様性は失われていく。クレオール語は英語がベースの言語であるが、英語と接触していくうちにクレオール語が不完全な言語であると感じ始め、脱クレオール化という現象は起こる。実際多言語状態は国家統一を妨げ、大国家出現には言語統一が必要である。

 

言語多様性とグローバル化の関係

・ 現在多くの言語が共存している地域が多くあり、ソグリニティーが確立している場合は国をまとめる事が出来る。カナダはイギリスとフランスの統治下にあったため、フランコフォン(フランス語を話す人)とアンフラフォン(英語を話す人)の二つの政治取引が重要であった。オーストラリアでは原住民もいるため問題も多く、現在では元々の原住民語が消滅しているため、それをどうにかしようという試みもある。これはグローバル化が意識されているためで、そこから救おうと政府レベルでの試みも行われている。こうする事によって文法の言語現象を解明したり、概念の多様性を保てるなど、多様性を維持する事が出来るのである。

 

言語の消滅と復活

・ さまざまな言語が混ざり合い、合成語ができている。一方、英語が大言語となり重要性を認識しれており、近年一つの動きとして英語なまりも個性なのだと考えられ始めている。すなわちEnglishes(英語は一つでなく複数である)。英語が標準語化されつつある中で、言語の多い地域では公用語認定が行われ学校教育問題と直結している。自分の地域で優性の言語があるが、そのうち地域の言語で話すようになり、地域言語が共通言語に向かいグローバル化し、少数言語が消滅の危機にある。そんな中言語を復活させようという動きもあるが、自分の言語をいかに誇りに思っているかが言語の保存、復活には必要な事である。自分の言語を保存しつつ、他の言語習得をする事が理想とされている。

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